メガネを愛してやまないクリエイターが集まりました! ~第一回メガネ座談会(前編)~

other

メガネを愛してやまないクリエイターが集まりました! ~第一回メガネ座談会(前編)~

2018.09.19

ここはメガネのこと、ファッションのこと、そしてカルチャーのことを愛する人々が集まる秘密の部屋。それぞれがどのようなメガネを愛し、どのようなアイコンに憧れているのかなどを自由に語ります。さて、今日はどのような人たちがこの部屋に集まったのでしょうか?

GUEST
小野田 史
小野田 史 hitoshi onoda
ブランディングスタイリストとして『Pen』などの男性誌を中心に俳優やミュージシャンなどのスタイリングを手掛けるほか、TVCM など広告のファッションディレクションやコンサルティングも行う。ファッションパートナー株式会社 代表取締役。
服部 昌孝
服部 昌孝 masataka hattori
スタイリスト。メンズ、ウィメンズ問わず、ファッション雑誌のエディトリアルからブランドの広告ビジュアル、さらにランウェイやミュージシャンや俳優など、様々なジャンルで活躍する。
松村 直斗
松村 直斗 naoto matsumura
トロピカル松村のペンネームで活動する編集者。『BRUTUS』、『POPEYE』や『Begin』などの雑誌を始め、ウェブ、広告などの制作やディレクションを行う。70 年代から80 年代のカルチャーに造詣が深く、当時の空気感を味わえるディスコDJ としても活動する。



松村直斗(以下、松村):この見た目ですでに分かっていると思いますが、僕はメガネをはじめ身につけるものの根本にあるのは、やっぱり"他人とかぶりたくない..."という想いがあります。昔はその違和感を感じることがある種の快感と感じていたこともありましたが、今はそれが当たり前のようになっています。

服部昌孝(以下、服部):その感覚は分かります。

松村:僕がファッションとかに興味を持ち始めた頃がちょうど70 年代ブームでした。雑誌の『フリーアンドイージー』や田中凛太郎さんが監修をされていた『MY FREEDOM』などを見て、強烈な憧れを持つようになりました。そこからアメリカンスタンダードが好きになったのですが、最終的には自分が日本人だからということで、日本のサーファースタイルに惹かれ、実際にサーフィンをしていくうちにこのような容姿になってしまったんです(笑)。そして自分の興味はそれだけに留まることなく、日本のディスコにはまっていくんですね。この当時のディスコを紹介する本の中では、みんな見事にティアドロップをかけているんですよ。めちゃくちゃかっこいいんです。それから僕もティアドロップをかけるようになって...。僕は単純に、当時の日本人になりたいんです。

座談会イメージ
座談会イメージ
「僕は単純に、当時の日本人になりたいんです」と語る松村さん。『75-85 Surfing Japan』という75 年~85年の日本のサーフシーンを収録した貴重な資料を見せながら、当時への熱い思いを語ってくれた。

服部:松村さんの場合、ファッションの捉え方とも少し違うのかもしれないですね。ある意味、仮面ライダーに変身するための"変身グッズ"の一つとしてメガネがあるというか。

松村:その通りかも知れません。タイムスリップをする道具みたいな感覚ですね。いわば、なりきるための道具。小野田さんはどうですか?

小野田 史(以下、小野田):僕は、松村さんとは逆の考え方になるのかもしれないですね。僕自身がメガネやサングラスを選ぶときは、ファッション性よりも実用性を考えるようにしています。なので、ファッションとしてのアイウエアは普段はあまりかけません。もちろん、スタイリストという職業上、アイウエアは関心の対象ですし、スタイリングの際には、やはりファッション性も重視します。ただ、同時に、普段からかけているようなリアリティを表現するのも、ものすごく好きな作業です。

松村:なるほど。ファッションの意味を持つメガネを"アイウエア"と呼んでいらっしゃるんですね。小野田さんがそんなアイウエアをかけないというのは何か理由があるのですか?

小野田:アイウエアは、年代や嗜好を露呈するものだと思うんです。仕事柄、できるだけ自分自身は、何事にも偏りなくありたい。つまりフラットな状態にしておきたいんですね。なので、あまりに年代や嗜好が分かるアイテムは避けるようにしています。今は"○○年代"や"×× 系"と括られやすい時代ですよね。よくも悪くも。それもあって、自分が着る服も基本的に無地やシンプルなものにしています。今日もそうですけど。

松村:年代というものは、必ずつきまとってきますよね。僕はそこに惹かれている人間ではありますが。

小野田:そうなんです。そこに当然『カルチャー』も入ってきますよね。それを自分で身につけるのは、ちょっと勇気がいるというか。だから服部さんや松村さんが少し羨ましいと思う部分も正直ありますね。

服部:小野田さんほど深く考えていないからかもしれませんよ...(笑)。では、今日小野田さんが持ってきているサングラスは、カルチャーが無いものということになるんですか?

座談会イメージ
スタイリスト小野田さんの私物のサングラス。1930 年代にルーツを持つ老舗ブランドのアイウエアはヨーロッパを中心に定番アイテムとして生活に親しみが持たれている。

小野田:そうですね、年代がわかるようなカルチャーではないですね。これはイタリア生まれで古くからあるアイウエアブランドの、いわゆる古典的とされているものですから。

松村:ある種スタンダード化されて、いい意味で"色"がないと。

小野田:そうです。ヨーロッパへ行くと、このサングラスは一般化されていて、「そのサングラスどこの?」といったような質問はほとんどされたことがありません。なので、古典としてこれはありなのかなと思い使っています。自分が身につけるものとなると、このサングラスのように極力癖のないものを探してしまいますね。

服部:そうなんですね。そのような考え方に辿りつくまで、紆余曲折はありました?

小野田:もちろん、いろいろと経験はしてきましたよ。もともと僕は小学生の頃から目が悪かったんです。たまたま親戚がメガネ屋を経営していたこともあり、当時はコンタクトレンズという選択肢はなく、メガネをかけるのは必然的なことでした。でも、そのメガネを選ぶ作業がものすごく大変だった記憶があります。自分に似合うメガネがなかなかわからなくて。というのも、メガネというもの自体がコンプレックスの対象だったので。

松村:確かに、小学生の時ってメガネをかけているだけで"メガネ"ってあだ名をつけられたり...。今思うと不思議な現象ですね。

座談会イメージ
座談会イメージ
「ごく自然な存在感のメガネを探す作業は昔からしていたんだと思います」と語るブランディングスタイリストの小野田さん。メガネに内在する実用性とファッション性のバランスを、スタイリングでは常に追求している。

小野田:特に幼い頃は、メガネがネガティブな対象となりやすいのかもしれませんね。なので、僕もできるだけ"普通"のメガネをかけていました。そう思うと、ごく自然な存在感のメガネを探す作業は昔からしていたんだと思います。もし松村さんのように強い存在感のメガネをかけていたら、もっと強靭な精神力が身についていたかも(笑)。

服部:僕の場合は、目もいいですし、最初からファッションの感覚でメガネをかけていますね。ただ、松村さんと異なるのは、カルチャーや歴史的な部分の話はできるだけ意識をしないようにしているところです。まずはビジュアル。ヴィンテージのメガネはもちろん、古着も同じですが、"かっこよければいい"という意識が大きくあります。だから自分のものの選び方の多くは、直感です。もちろん感覚的に選んだ後に、特定の年代にハマるとか、カルチャーにハマるというのはありますけど。

小野田:お二人は言うなれば、"アイウエアプレイヤー"なんだと思います。メガネというものを最大限に遊び、楽しんでいる気がします。つまりメガネが個性を出すための大切な道具として、ご自身のキャラクターと印象をより強くしているように思います。

座談会イメージ
テーブルを囲んで話をする(左から順に)スタイリストの小野田さん、スタイリストの服部さん、編集者の松村さん。年齢も趣味や嗜好も異なる3 人の鼎談は終始笑い声や感嘆の声が絶えなかった。

松村:小野田さんが興味を惹かれる人が知りたいですね。

小野田:建築写真で有名な芸術家の杉本博司さん。そして、ユニクロでデザインディレクターを務め、「1 億人の服のデザイン」の著者でもある滝沢直己さんです。

服部:杉本さんはメタルのコンビネーションで、滝沢さんが黒のセルフレームですかね?

小野田:はい。杉本さんはどちらかというと個性的なメガネをかけていらっしゃいます。このようなことを言うのはおこがましいのですが、ファッション業界の方ではなく、芸術家である杉本さんがコンビネーションフレームをかけられているというのが、見事なバランス感で感動してしまいました。一方、滝沢さんは、服部さんがおっしゃる通り、黒のセルフレーム。とくに飾りもないものすごくシンプルなものです。滝沢さんが実用性を重視したメガネをかけられているのが、まさに『1 億人の服のデザイン』に重なる気がします。仮にこのお二人のアイウエアを入れ替えると、滝沢さんはファッショナブルになりすぎてしまうと思うんです。1 億人に向けて洋服を作るには常に自分をフラットにしなくてはいけないという姿勢が、滝沢さんの選ぶメガネから僕には感じられます。

松村:自分の職業や趣味などに対して選択すべきものを選んでいる、ということですね。

小野田:そのように思います。ただ、その選択基準は人それぞれだし、それでいいと思うんです。例えば、松村さんや服部さんのアイウエアの選び方が、ファッションの面白さのルーツでもあるように。これが正解、不正解とは一概には言えないものだと思います。

座談会イメージ
座談会イメージ
「着飾るためのメガネとして使っています」と語るスタイリストの服部さん。コンゴのサプールが派手なスーツを着て街中を歩くように、メガネはキャラクターや個性を増幅するものとして考えている。

服部:そうですね。同じスタイリストですが、僕は小野田さんと真逆の考え方をしていると思います。僕のメガネのかけ方の基本は、コンゴ共和国の"サプール" ですから。世界最貧国の1 つと言われているアフリカのコンゴにおいて、派手に着飾ることを通して平和のメッセージを発信するジェントルマン集団です。まさに、この表紙の帯に『エレガンスこそすべて』と記してあるように、僕は着飾ることとしてメガネを使っています。さすがにサプールは辿りつけない境地なのかもしれないですけど...。

松村:本、見てもいいですか? かっこいいですね~! パッと見の"かっこいい"は、もしかしたら服部さん側なのかもしれないですね。そもそも比較することではないと思うのですが。

小野田:確かに。比較はできないですが、メガネにはそれほど幅があるということですよね。だからこそ、メガネ一つにしても、こんなに選択肢がありますし、メガネを選ぶことが楽しいんだと思うんです。



元来、見えないものを見えるようにするために発明されたメガネですが、どうやら今のメガネはそれだけではないようですね。小野田さん、服部さん、そして松村さんのメガネに対する考え方とこだわりは様々でした。次回後編では、そんな異なるこだわりを持つ3人が、JINS のメガネをテーブルに広げ、スタイルの話やディテールの話などを熱く語ってくれます。乞うご期待!

>第二回メガネ座談会(後編)はこちら




【Staff credit 】
Cast:Hitoshi Onoda(FASHION PARTNER), Masataka Hattori, Naoto Matsumura
Photography:Takao Iwasawa
Text :Takuhito Kawashima(kontakt)