例年とはまったく違う日々が続く2020年ですが、気づけば秋冬シーズンが到来。外出する機会も少しずつ増え「こんな時だからこそ、たまにはおしゃれして気分を上げたい」という人も多いのではないでしょうか。そこで今回も、前回の春夏編に続き、ファッション&ビューティのプロにトレンドをあれこれ教えていただく座談会を開催。もちろんトレンドに似合うアイウエアもあわせてご紹介します。まずは前編・ファッション編です。
春夏の"サスティナブル"に続く流れは
エレガント服や黒コーデなどの提案が
金田太郎(以下、金田):春夏に続き、今回もよろしくお願いします。それにしても...今年は大変な状況になってしまいましたね。とはいえ2020-21秋冬シーズンのコレクションが発表されたのは1月から3月頭にかけてで、まだ新型コロナウィルスがここまで深刻化していない時期でした。なので直接の関連はなく、春夏の「サスティナブル(sustainable/持続可能な、の意)」から続く流れのスタイルが多かった気がします。
岡田真里奈(以下、岡田):なるほど。例えばどんな服ですか?
金田:まずは男女共通のトレンドについてお話しますね。いくつかの流れがあって、第一に、"ブルジョワシック"といった感じの、70〜80年代の、ファッションが華やかで勢いがあった頃のリッチな人を思わせるスタイル。メンズならスーツやジャケット、レディスならブラウスや長めのスカートが代表的です。上品かつクラシカルで、トレンドに左右されず長く愛用できそう。
加藤真弘(以下、加藤):ストリートファッションからきれいめな格好へという流れは、春夏にもありましたよね。
金田:そうですね、それが秋冬も続いていると思います。第二に、セットアップ。メンズは今お話したスーツに加え、カジュアル寄りのジャケット&パンツ、中にはトップスがパーカやブルゾンなどのタイプもあってバラエティ豊か。レディスもパンツとスカート、どちらも多彩です。
石丸雄策(以下、石丸):セットアップは雑誌の撮影でもよく目にします。
金田:セットアップって、リアルに取り入れる場合、上下で着るのはもちろん、単品で着まわしができて便利ですよね。以前から人気ですが、今季も新たな提案が加わって魅了を増しています。第三にあげるジェンダーレスは、モードの世界だけでなく、身近なブランドにもますます浸透しています。男女で服や小物を共用するのはごく普通になっていて。
加藤:Tシャツやデニムといったアイテムを、メンズ・レディスと分けずに展開するブランドもありますよね。最近ではテレワークが増えて、カジュアル素材のジャケットなど、オンとオフの中間に位置するような服も多いです。着用する人やシーンを限定しない服はひとつの流れかも。
金田:そういった、自由で実用重視の姿勢はとても今っぽい気がします。そして第四のトレンドがオールブラック。今季は男女を問わず黒のワントーンコーデを提案するブランドがとても多かったんです。他の色を入れず、黒のみ。一見すると世相を先取りしたかに見えてドキッとするんですが、暗いメッセージというわけでもなくて、黒一色のなかに異なる素材やシルエットを重ねてニュアンスを楽しむという提案が多いのではと思います。黒がお好きな辻野さん、いかがですか?
辻野ゆう(以下、辻野):(資料を見ながら)本当だ、黒のコーディネイトがとても多いですね。嬉しい(笑)。
金田:黒の服って、多少デザインで遊んでいても取り入れやすい。トレンドの影響をあまり受けないので何年も着られます。
岡田:洋服を見ながら、ブラックコーデにメタリックなメガネをさらっと合わせる、なんて着こなしもかっこよさそう、と思いました。
金田:素敵だと思います。黒でまとめている分、小物使いが映えますよね。
辻野:金田さんが挙げた4つのスタイル、最初はひとつひとつ違う印象でしたが、どこか繋がっているように感じますね。早いサイクルの流行ではなく、服のいろいろな楽しみ方の提案というか。今の気分にしっくりくるように思います。




女性はチェックやレッド、男性はミリタリーなど
"今期のエッセンス"を取り入れて装いを刷新
金田:ここまでは特に気になった4つのスタイルに触れましたが、ここからは小ネタ的に、トレンドのアイテム・素材・柄などを紹介します。男女別に考えたものの、なかには共通のトレンドもあります。まずはメンズのキーワードから。ベルトマーク、クラシックブルー、ミリタリー、レザーコートの4つです。
加藤:レザーのシングルライダース、買おうと思っていました。レザーはトレンドなんですね。
金田:はい、レザーは男女ともに人気です。特に注目は、男性ならコート、女性ならフレアスカートといった、新鮮味のあるデザインですが、ライダースなど定番的なアイテムも取り入れやすいと思います。
岡田ベルトマークも女性誌やショップの秋冬コーデで見かけます。男性にも流行っているんだ。
金田:男女ともシャツやブラウスをボトムにタックインする着こなしは多いですし、今季はジャケットやコートの上からベルトをするのも人気です。手持ちの服で取り入れるのも手だと思いますよ。クラシックブルーは2020年を通してのトレンドカラーで、重く見えがちな秋冬服の差し色として映えそうです。
石丸:ミリタリーはメンズだと安定した人気ですよね。
金田:そうですね、今季はカーゴパンツがちらほら見られたんですが、サテンやウールといった上質感のある素材で仕立てた提案が新鮮でした。
加藤:なるほど、カジュアルすぎず、大人っぽく着られていいですね。






金田:定番のコットン素材よりトレンド感もありますしね。そして女性は、先ほどお話したレザーに加え、チェック、レッド、フルレングスコートをキーワードとして挙げたいと思います。まずはチェック。トップスやコートに思い切った大柄のチェックが使われていて、チェックがこんなにインパクトのある装いになるのかと驚いたんです。
辻野:チェックって秋冬の定番という印象ですが、そういったアレンジは新鮮。
金田:1点投入すると、即トレンドの着こなしが楽しめると思います。こういったパワーのある服で気分を上げるのもファッションの楽しさですよね。
岡田:そういった意味では、レッドもかなり強力ですね。今季はパキッとした赤が多い印象。
石丸:メイクでも赤リップは安定した人気です。すっと背筋が伸びるような、パワーをもらえる色ですよね。
金田:赤を取り入れた装いは目をひきますしね。あと、フルレングスコートはここ数年の流れでもあるのですが、この"すっぽり感"が今季も気になって。実際たくさんのブランドから登場しています。
岡田:シルエットは? これまでゆったりめが多かったけど、少しタイトになりますか?
金田:はっきりした傾向はなく、両方あるように感じます。テイストもさまざまなので、好みで選べると思いますよ。
加藤:なるほど。この秋冬の傾向、いろいろとわかって参考になりました。どんな格好をしよう? どんなメガネを合わせよう? と、モチベーションが上がりますね。僕はまずレザージャケットを手に入れたいと思います(笑)。


秋冬のトレンドに合うメガネを
金田さんがセレクト!
座談会の後は、金田さんと石丸さんに、秋冬のトレンドに合うメガネを選んでいただきました。ファッション編の今回は金田さんのセレクトをご紹介。MD担当の辻野さんに今季の傾向などを聞きつつ選んだ2品は...
「最初に目が留まったのがリムの上部に濃いブラウン、下部にゴールドを使ったフレーム(写真手前)でした。サーモントを再解釈したデザインとのことで、クラシカルと今っぽさのブレンドが絶妙。シックな装いにすごく映えそうです。クリーム色のリムが印象的なフレーム(写真奥)は、軽やかな色が秋冬コーデのハズしとして活躍しそう。テンプルはゴールドで落ち着いた雰囲気なのも気に入りました」


秋冬シーズンのファッションについて、全体の大きな流れから具体的なトレンドまでお届けした今回、いかがでしたか? ぜひワードローブ計画の参考にしていただければ幸いです。次回は〈後編:ヘア&メイク編〉をお届けします!